執事長就任ご挨拶

 政情不安や人々の精神不安が益々増大しておりますこの時、正に暗闇を取り除き、憂うべき現代社会に日月の光明を輝かせる有為なる素晴らしき人才が、池上に錦を飾られました。
 このたび静岡市本山海長寺より晋山された、菅野日彰猊下です。菅野貫首様は出家され僧侶として学問を志すべく、生れ故郷の北海道礼文島から上京され、始めてその草鞋を脱がれた処が、当時私の師父が住職を務めていた池上の永寿院でした。貫首様にとって、この池上が第二の故郷ではないでしょうか。
私はそのころ小学校から中学になる頃で、北海道から大学生のお兄さんが来るというので何か子供心に嬉しく、友達に自慢気に話していたことを記憶しております。その後貫首様は数多の筆舌に尽くせぬご苦労をなされ、学問に励まれ首席で大学を卒えられました。一人の人間としての個性、生きざまということが本当に大切なのだと、常に御自身を磨かれてこられた貫首様です。今日までのご苦労と努力、そして谷中学寮々監として多くの学生を訓育指導されるなど、数々の輝かしい功績をもって大本山池上本門寺第八十三世の猊座に登られたのです。
その菅野貫首様から、私に執事長を勤めるようにと勿体なくもお話しがありました。私は誠にその器に非ず、幾度となくお断り申し上げましたが、受けるまで私の自坊であります南足柄の雨坪に通うと仰います。大事な時に時間を費やしては申し訳ないことと、又、昭和三十年代から永く御交際を頂いたことなど、様々な深い御縁を噛みしめつつ千思万考、恥を覚悟でお受けした次第です。
貫首様は、皆様に池上へお参りしていただき、本門寺が心のともしび燈となるように、と仰っています。私共内局は全国からお参りに来られます皆々様に〝合掌と微笑み〟をもってお迎え致します。全国御寺院各聖、御信徒の皆々様、池上本門寺隆昌の為、今後益々のお力添えを下さいますよう何卒宜しくお願い申し上げ、執事長就任の挨拶とさせて頂きます。

合掌

池上本門寺執事長
金子元彦