クール・ジャパン

最近「クール・ジャパン」という言葉をよく耳にする。「カッコ良い日本」という意味だ。日本の良いところを見直そう、ということで、日本に留学している外国人や日本に駐在しているビジネスマンに、日ごろ日本に感じている「カッコ良さ」や不思議に思っていること、自国にはない面白さを語り合う番組が人気である。
日本食や日本酒がブームになっていることはよいことだと思う。食事作法や食器の美しさについて日本人自身が見直すことに通じる。寿司や天ぷら、ソバ、うどんが江戸庶民にどんな形で愛されたかを調べるだけでも面白い。芝居見物の席に弁当や酒が運ばれ、芝居そっちのけで食事を楽しむ姿や、花見に持参する弁当の中身に一喜一憂する庶民の姿は現代の我々の興味を大いにそそるものだ。
豊かな食文化を持つ日本人は本当に幸せな民族だと思う。海の幸、山の幸、そして豊かな地味から生み出される食材の多さは世界に類を見ない。その中から出てきた言葉が「いただきます」と「ごちそうさまでした」だ。この二つの言葉の意味を捉えて訳せる外国語は無いという。
そもそも「いただきます」は食材になってくれた命に対し敬意を払って「あなたの命を頂戴します」という意味を持つ。「ごちそうさまでした」は漢字で書くと「ご馳走様でした」となる。この「ご馳走」というのが肝で、贅沢な食事という意味での「ご馳走」とは少し意を異にする。元々は各地から馬を走らせ、美味しい食材を集めたことに由来するのだ。つまり「ごちそうさまでした」の中には、食材を調達してくれた人、調理してくれた人への感謝が込められている。
食材になってくれた命への感謝。料理として運ばれるまでに関わった人々への感謝を表現したこの二つの言葉は、日本が世界に誇って良い最高の「クール・ジャパン」だと思う。

合掌

酒井智章