正直者の頭に神宿る

 「ことわざ(諺)」の多くは庶民の生活の中から生み出されたものであり、実体験がほとんどです。『正直者の頭に神宿る』と言う諺がありますが、これは日ごろまじめに働く正直者には必ず神や仏の加護があるもので、そのおかげで物事は順調に進んでいくものだ、という意味です。しかし、最近あまり耳にしなくなり、「正直者が馬鹿を見る」、「偽りの頭に宿る神あり」等の対義語の方が多く聞かれ、浸透しているようです。
 日本には古来から森羅万象に神が宿る思想『八百万の神』がありますので、信仰しているものを守る仏教守護の善神とは限りません。しかし、一般に言う神は、人の道、人の心を念頭に考えて、絶え間ぬ努力を重ねている者を守る神で、福・幸運を導いて下さる『神』を指します。信仰とは一線を画す『ことわざ』であろうと思います。
 私達、法華経・日蓮大聖人の教えを信じている者は、神と言えば法華経の教えを実践する者を守る、法華経・仏法守護の善神を思い浮かべます。法華経の常不経菩薩品第二十に於いて、常不経菩薩は正に神の守護する「正直者」と言って良いでしょう。常不経菩薩は、人々を合掌礼拝し続けた一人の菩薩のことであり、『但行礼拝』の実践者です。私達は、法華経・日蓮大聖人の教えの実践を通して、「平和で、安らかな世界」を目指していますが、特に信仰を意識しない者でも、人の道、人の心をいつも念頭に考え、お互いに助け合う心を大事にしている人は、善神に導いて頂いているのです。『正直者の頭に神宿る』

合掌

佐山泰典