菅野貫首写真

種々の災難の根源を知り対治行いを加うべきなり(災難対治抄)

 ご本文は『国土に起る大地震、非時の大風、大飢饉、大疫病、大兵乱等の種々の災難の根源を知りて対治を加うべきなり』です。対治とは、その根源を知り、反省、対策を考え行動することであります。
 さて、今月の聖語を拝見して七百年後の今日と同じとお感じになられませんでしょうか。大地震、大型台風、大飢饉、そしてこの度のコロナ、大疫病であります。更には中東で始まっている局地戦争等々。七百年前より悪化しているのではないかと危惧する昨今の世界情勢であります。しかもその「根本」にあるのが七百年前と同じ人間の「エゴ」「欲望」であります。個人の欲望に始まり、国家の欲望、権力者の欲望が混乱の根にあります。
ではどう対治したらよいのか。日蓮聖人の答えは只一つ、
「法華経のこころ。お釈迦さまのみ教えに人々が従うこと」
では法華経のこころとは何でしょうか。
法華経には、後に涅槃経に説かれる「一切衆生 悉有佛性 草木国土 悉皆成佛」のこころ、この世に生きとし生きる者全て自然界にも佛性が具わっている、自分の佛性を大切にすると同時に相手の佛性、自然界の佛性も大切にしなさいと説かれます。
私達はみな自分の幸せを求めておりますが、自分が幸せになりたかったら他の人の幸せも祈ってあげなければいけない、と頭ではわかっているけれども…。これが現実であります。ですがもしこの事に気づき行動をおこし、一歩でも歩み始めた人がおられたらその人は本当の安心の世界に向かって歩み始めた人、法華経の安心の世界に一歩踏み込んだ人。
今日の言葉で申しますと、他から強制されるのでなく、自らが自らを律する生活をする人であります。そして二人三人と続いた時、地球は平安に向かって大きく進んだことになります。法華経を信じ、お題目をお唱えしている私達日蓮聖人門下の者こそその一人でなければなりません。共に精進して参りたく存じます。
一つ心配していることがあります。「今世界は太平洋戦争の時代、七十年前と同じ争いの世に向かっているのではないか」という事です。人々の欲望、エゴのかたまりである専制国家、独裁国家がすでに十指に余るほど誕生しておりますし、日本も目に見えない形の専制国家になりつつあります。ところが人々の中には「その方がうまくゆく」と言い出す人が現れはじめております。お気付きの方もおられましょうが政府・役所は国民の事をいろいろ知ろうとしていますが、政府・役所のことを国民に知らせません。むしろ隠しております。おそろしい事です。そうならない為にも私たちは人間のエゴ、自然へのエゴを反省、「自由と責任が一体となっている民主主義」と「み佛の説かれる個人の安らぎ、世界の平安のみ教え」を合わせ守ってゆきたいものであります。


合掌

日彰