池上のご守護神さま

世間の楽及び涅槃の楽を得、貧窮の衆生には福力を与え病ある衆生には良薬を与え、智なき者は智者と成し、短命の者は長命と成し、悪心の者は善心と成す云々。
(大黒天神供養相承事)
今回ご紹介申し上げる日蓮聖人のご文章は池上兵衛志殿にお与えになられた大黒天神ご守護を説かれた御文の一説であります。ただし学問的には聖人のご文章と認められておりませんが、ご守護の善神のご守護の内容を詳しく示しておりますので、その内容に重きを置きお読み頂ければと思います。
 その前に大事なことを申し上げます。それは全てのご守護神は、南無妙法蓮華経の七字の大光明に照らされて初めてお力をお出しになれる。つまりご守護神は久遠の佛さま、法華経お題目弘経のお手伝いの役として、私たちをお守り下さっておられるのだということ、ご守護神さまにお願いする時はその後ろにおられる久遠の佛さま、お題目をしっかりと心に止めてお願い申し上げる。このことをしっかりとお心に止めておいて頂きたいと存じます。それでは私の現代語訳をお読み下さい。

「ご守護神のお力、救済のお力を具体的に申し上げると、まず日常生活に於いて平安であること、そして最終的には何物にも心を動かされることのない、大安心の境地に導いて下さること、金銭だけでなく心の貧しい人には豊かさを、病人には良き薬を、知識のない人には単なる学識ではなく、人生の智慧・佛智を与えて下さる、又短命の人には長命を、悪心の人には善心を与えて下さる。これがご守護神のお力である。」
 池上のお山には長栄さま、大黒さま、日朝上人、清正公さまが奉安されており戦火を受けるまでは全てのお堂が在りました。色々なことがあり目下大黒さま、清正公さまが仮住まいであります。何時の日かお堂を建立させて頂きたいと願っているのは一人小衲だけではないと存じます。
 さて先号でも申し述べましたが、今の日本は〝心の戦争〟の最中にあります。本稿を執筆中の一月末日にも池上と同じ大田区内で、三才の男子が母の愛人によって殺されるというニュースが報じられました。日本人は動物以下の人間に成り下がったとは識者の言葉でありますが、私はテレビのニュースを見ながら涙し合掌唱題致しました。
 池上本門寺では様々な文化活動や行事、人生相談を行い佛縁の絆の手を差し伸べております。信行会や唱題行を通してより深くお題目の心を知って頂く活動も行っております。そしてご守護神を通してこのご加護の祈りも行っております。これらの全てが心の戦争に対する防戦(よびかけ)と心得ております。この中の一つでもあの母親・あの父親・若い母親の内縁の夫そして母となる自覚の無いままに子供を持ってしまった母親、いや目下その渦中におられる男女に池上からのよびかけの声が届くことを希ってやみません。


合掌

日彰