菅野貫首写真

帰命(きみょう)と申すは我が身を
 佛に奉ると申す事なりし
(事理供養御書)

三月は春のお彼岸、菩提寺の御本尊さま、ご先祖さま、先亡の方々にお参りなさる時日蓮聖人のご教示を思い出していただきたく、今月のご妙判をご紹介申し上げました。
今月ご紹介の事理供養御書と申しますのは、御真筆は富士大石寺に格護されておりますが年号とどなたにお与えになられたかは不明です。後半と思われる部分だけが失われているのです。ただこのお手紙は、『白米一俵、里芋一俵、海苔一籠』ご供養へのお礼状でありまして、海苔のことを「こふのり」とお書きになっておられ、これは、静岡県芝川に育成する〝河苔(かわのり)〟のことでありますので、お手紙のお相手は静岡在住の方、しかもその内容から拝して篤信の方のご供養、この方へのご返事では、と私は理解しております。
あらためてご紹介のご妙判を拝しますと
「み佛、法華経、お題目を信仰するという事は、我が身をみ佛にささげるということ、それほどの覚悟・気持ちを持って信じきりなさい」
毎々申し上げておりますように、この強い表現はこの方へのご教化と申しますよりこの方を通じて、他の方へのご教化と、末世の私たちへのご教化が多分にこめられていること、申すまでもありません。
 さてその末世である現代の信心を申し上げますと、今年のお正月は当山に沢山の方々が初詣をなさって下さいました。そして昨今はおみくじブームだそうでしてお山ではおみくじの台を各所に配置しましたが、それでも長い行列が出来ました。中には「吉」が出るまで何回も引く人、行く所それぞれで引き、「吉」が出ると〝あそこのお寺は良い〟などと評価していると聞きます。多分に遊び心で引いておられ、祈る心は〝無〟なのでありましょうが、それにしてもと思います。
 こういうブームを目の前にしておりますので、あえて先月は「信」、今月は「帰命」という信仰の根幹の話をさせていただいた次第であります。
 本文の「帰命」と申しますのは「帰依」とも申し訳し、「南無」と同義語であります。池上にご縁のある方ならば「なーむ」で親しんでおられることと存じます。この帰命と申しますのは佛さまのみ教え、つまり南無妙法蓮華経に絶対的な信頼をよせると言うことであります。先師は「素直に真面目に真剣に信じなさい」とさとされておられますが、この心がなければ如何にお題目をお唱えしても、口ばかり言葉ばかりの題目になってしまう、とのご教示であります。
 お彼岸は佛道修行の一週間であります。自らの「信」「帰命」を問うていただければと願ってやみません。


合掌

日彰